私設強襲部隊ペドフィリアズ
国家を隠れ蓑に暗躍する闇の部隊、その名はペドフィリアズ

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レッツ・ゲットセット・リバイブ

第四話『多数決』

「丸木戸誠さん…いや、神っスね?」
 突然の背後からの声に、丸木戸は振り向く。
 若い男がいた。長身痩躯。細顔。無造作な髪型。ラフな服装。Tシャツ……アニメの女の子がプリントされている。
 丸木戸は表情を変えない。
「はい。神ですが何か。」
 男は爽やかに微笑む。
 改めて、彼の顔立ちを見定める。まあ、こいつは“イケメン”の部類に入るだろうな。と丸木戸は思った。
「良かった。探してたんスよ。」
 丸木戸はニヤリと笑う。
「私を抹消する為に?」
 男も唇をねじ曲げて笑う。
「フヒ…そうっス。俺、野柄人哉っていいます。」
「野柄君。イレギュラーの方から私にコンタクトして来たのは君が初めてだよ。」
 絶対客観空間。今、丸木戸と野柄は他者から隔絶された。
「嬉しいっスね。神に誉められた。」
 瞬間、丸木戸は不思議な感覚を得た。
 目の前にいる男……こいつは“独り”ではないのか?
「だけど……残念っス。貴方を倒さないといけないんで。」
 丸木戸は敢えて問う。
「どうして?」
 野柄の目に宿る、他者を見下した視線。
「……人間は神なんて要らないと思ってるんスよ。」
 丸木戸は目の前の男に嫌悪感を抱き始めた。
「なんだ?人間代表みたいな言い方をするんだね君は。」
「いや、要らないんスよ。実際。みんな思ってますよ。神は具現化したらダメなんスよ。あくまで心の中の存在でなきゃ。」
 なんだこいつは。
「いや、それは君の決める事じゃないだろ?みんなって、何処のみんなだ?」
「話になんないっスね。いいから、消えて下さいよ。」

You contacted IRREGULAR, Just now.

やがら ひとなり
野 柄  人 哉
HITONARI YAGARA
【絶対多数】
『Absolute Majority』

其の闘いに於いては
【逃走】と【引き分け】は
存 在 し な い
勝利者は生き
敗北者は死ぬ
実に単純明快にして
闘いのアーキタイプ
されど勝利者は敗北者に尊厳を
死者に弔いを忘れず

言い替えれば其れは
《Funeral》
葬 儀 で あ る

FUNERAL is start.

Let's get set SURVIVE.

「んじゃ、行くっスよッッ!」
 野柄が右の拳を繰り出す。
 丸木戸は避け―――
 意識が飛ぶ。
 それは一瞬。しかし。丸木戸は今まで味わった事のない衝撃を受けた。
「なんだ?」
 野柄は戦闘態勢に構えている。
 彼の放った拳は一撃。一撃だった筈だ。 しかし……。
「どうっスか?“76億人”分のパンチを食らった気分は。」
「……成る程。これが君の能力か。私が神でなければ死んでいた所だ。」
 野柄はニヤリと笑う。楽しくて仕方がないといった風に。
「ヒヒッ……神でなければ死んでいた……その通りっス。全力を出せるのも、貴方が神だからで……」
 丸木戸はやれやれと溜め息を吐く。
「……76億人分のパンチ?中二病も甚だしいな。偶にいるんだ、お前のように、自分が複数の代表であるかのような言動をする奴が。」
 野柄は既に攻撃動作を終えていた。
 またしても―――野柄の言う所の“76億人分”の―――衝撃が丸木戸を襲った。
 丸木戸はゆらりと体勢を崩す。
「ははは。大した事ないじゃないスか。何が神っスか。この程度で……」
 がしっ。
 丸木戸の右腕が、野柄を捕らえた。
 しかし野柄は怯む事もない。
「無駄っスよ。」
 怯まないのは丸木戸も同じだった。
『俺は76億人分の生命力を持つっスからね。』
「お見通しっスか。」
「当たり前だ。神を誰だと思っている。」
「まあ、それに気付いた所で……」
「もう、いいだろ?」
「!?」
 野柄は、身体から全てが失われていく感覚を味わっていた。
「76億人分の力と命。確かに君は、異常な強さを持っているかも知れない。が、神の前では、無力に等しい。何故なら、」
「ああ、あああああ」
「76億“人”だからだ。」
「ああああああああああ」
「こんな事を言うのもどうだか知らんが……神というのはとにかく無敵なのだよ。負けないんだよ。」
「あああ」
「貴様らが束になってかかってこようと」「あああああ」
「……つまらないよな。」
「あああ!あああああ!」
 野柄の叫び声は、76億人分の叫びだった。
「どんな危機もひっくり返す、絶対の力。それが神だ。平伏せ。」
 絶対客観空間が閉塞しようとしていた。
「この調子で、お前らを絶滅させてやる。」
 そして、閉塞。
 野柄の叫び声が遠くなっていく。彼は、今から、76億人分の死を味わっていくだろう。最後の一人になるまで。
 丸木戸は呟いた。
「……まだ終わらないのか?」

》つづく《

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  1. 2009/05/17(日) 10:46:50|
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Basilard

「…来ます。」
 魔法陣の上に座臥していたマインシュッツルテッドノイバウテニカ(マドカ)が、静かに言った。
 対してバゼラードは、不敵な微笑みを浮かべる。
「ふん。突っ込んでくるか。黙って焼けばいいものを。くだらん騎士の誇りにこだわりやがって。」
 シュリン…、と冷たい音を立て、鞘から剣が引き抜かれる。バゼラードが命を預ける一本の剣『アドラー』。
 それを右手に携えて、バゼラードはゆっくりと歩き出す。
「あんたはここにいな。」
 立ち上がるマドカ。
「いえ…奴らの狙いは私です。あなたは引っ込んでて下さい。」
「もっとマシな言い方はないものかな。まあいいや。好きにしな。」
 魔女と傭兵は、戦いへと赴いた。

 マドカの小屋をぐるりと取り囲むスクラマサクス騎士団。
「魔女マインシュッツルテッドノイバウテニカ!貴女は完全に包囲されている。抵抗しないで出てきなさい!」
 次の瞬間、小屋が爆発した。
 ズ ガ ァアアア ン!
 爆炎、揺らめく炎の中から現れたのは、魔女マインシュッツルテッドノイバウテニカ。表情は平穏であるが、そこがまた恐ろしい。
 ( °Д °)←こんな顔で固まる騎士団の面々。
 しかし、1人だけ余裕の表情を浮かべる者がいた。
 騎士団長・マサカズである。
「ほっほお。ハデな登場や。そういうのは嫌いやないで。」
 マドカはゆっくりと前に出る。
「…何の御用ですか。」
「何の御用て。わかっとるやろぉ。…魔女狩りや。あんたをコロシに来たんや。」
「…ふふ。」
 マサカズは剣を抜く。
「何がおもろいねん。」
 炎が一層揺らめきを増した。風が吹いたわけでもないのに。
「…やれるもんならやってみな。ハナクソ以下の下痢便野郎共が。ケツの毛まで焼き尽くしてやんよ。」
 ゴオッ!炎が蜥蜴の形を取った。
「我、契約に従いて汝に願う。炎の使者サラマンダーよ。こいつらを焼き尽くせ!」
 どこからともなく、不思議な声が響く。
〈わかりマンダー〉
 ごおおお!
 勢いを増した炎が荒れ狂う。
「うわー」
 騎士団の大半が恐慌状態に陥った。
「うろたえるんやない!アレを使え!」
 マサカズの声に、一時的に我に返った騎士団の面々は、ポケットから薬を取り出した。そしてそれを飲んだ。
「…ハイパーおちんちんターイム!」
 奇声を上げ、一斉に剣を構える騎士団。
 それを冷たく見つめるマドカ。
「…薬物に頼るなんて。誇り高き騎士団は何処にいったのかしら。」
「結局は人間や。こうでもせな、戦闘精神を保てへんのよ。」
「ふっ雑魚が。」
 マサカズの構えが変わる。
「…せやけど、俺は違うで。俺はクスリなんぞやらん。やらんでも、四六時中テンションバリバリなんや!」
「隙もバリバリやな。」
「なにっ!?」
 マサカズの背後に立つ人影。
「バゼラード…いつの間に…」
「いつの間に?そんな事にも気付かないなんてな。やっぱり見かけ倒しのハリボテ騎士団か。」
「くっ…」
「悪い事は言わねえ。このまま帰りな。てめーら如きじゃ、魔女狩りなんぞ無理だ。命が惜しくねえか?」
「貴方も命が惜しくありませんか?」
「なにっ!?」
 バゼラードの背後に立つ人影。
「アスファルテ…流石やな。」
 騎士団参謀・アスファルテは、マサカズに頭を下げた。
「…バゼラード。貴方とは一度剣を交えてみたかった。どうですか。1対1で戦いませんか。」
「…いいけどよ。この状況じゃな。」
 アスファルテは剣を下げた。
 バゼラードはニヤリと微笑むと、同様に剣を下げた。
 二者は間合いを取る。それは、剣士同士が刃を交える時の距離だ。
「…では、始めましょうか。」

つづく



  1. 2009/04/05(日) 13:56:11|
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Basilard

 ルフェリア村。
 戦乱のツフォルンエンペラス領内では珍しい、平和で素朴な村であった。
 戦乱の世にあって何故平和かというと、魔女が守っているからである。
 魔女はものすごい魔力を持っているので、みんな怖がって近寄らない。そうすると魔女の方も困るのである。魔女と言っても、魔力がすごいだけの女の人なので、完全に1人で暮らすのは難しい。
 そんな魔女を不憫に思って、ルフェリア村の人達は、魔女を村に迎え入れた。
 魔女の名を…

「マインシュッツルテッドノイバウテニカと申します。」
「長いな」
 バゼラードの眼前に立つのは、長い黒髪の美しい女性である。風貌、物腰、とても恐ろしい魔力を持った魔女とは思えない。
「そうですね。マドカ、と呼んで下さい。」
「なぜ!?」
「なんとなく。」
「まあいいや。…実は、スクラマサクス騎士団がこの村を狙っている。奴らの狙いは魔女狩り…とするも、村を焼き払う事を考えているようだ。俺には解せないが。」
「存じ上げております。…おそらく、村の地下に眠る遺跡が真の狙いでしょう。」
「遺跡?」
「超古代の産物ですわ。伝承には、神の乗り物とされています。通称、メルカヴァ。」
「…手に入れるとどうなる?」
「恐ろしい力を手にできると聞いています。」
「それは恐ろしい。どうしよう。」
「まあ、チンカス騎士団が束になったところで、私の前では蛆虫以下のゴミですわ。それに、バゼラード様がいらっしゃるのならば、向かう所敵なしでしょう。」
「俺の事を知っているとは光栄だ。」
「ええ。“神風のバゼラード”の名は、聞き及んでおります。」
「ありがとさん。ま、とりあえず、騎士団が攻めてくるのを待って迎撃するのが良さそうだな。」
「そうですわね。」
「うむ…ところで質問なんだが。」
「何でしょう。」
「なんでスクール水着を着ているんだ?寒くないのか?恥ずかしくないのか?痴女なのか?」
 バゼラードが言う通り、マドカはスクール水着を着ていた。そもそも、スクール水着は、マドカのような歳の女性が着るようなものではない。スクールと言うくらいなので、ユーザーには8~17歳の女子を想定している。
 しかしマドカは大人の女性だ。なので、かなりむちむちな感じになってしまっている。
 それがまたよい。よい!最高!うはー!
「はい。実はいやらしい事大好きです。」
「魔痴女…か。」

 それから3日後。
 ルフェリア村を一望できる丘の上に、騎馬の一群があった。
 白馬に跨る男は、スクラマサクス騎士団長・マサカズ=フォン=アルゲマイネ。
 その傍らに、地味な格好の偵察員が跪いた。
「…村は手薄なようです。現在、村にある戦力は、魔女マインシュッツルテッドノイバウテニカ、そして…傭兵協会からの派遣社員が一名。奴は…バゼラードです。」
 マサカズは、美しい金髪をかきあげながら口を開いた。
「…ほお。凄腕傭兵が来とるちゅうウワサはホントやったみたいやな。」
 騎士団の参謀、マサカズの腹心である、アスファルテ=ゴスペラニクスが、騎士団長にゆっくりと近付く。
「…如何致しましょう?」
「焼き討ちは止めや。」
「では、直接…」
 マサカズは頷く。
「せや。魔女狩り法に則って、マインシュッツルテッドノイバウテニカとガチでやったるわ。正々堂々とな!」
「魔女の魔力は凄まじい…しかし、それをわかっていながら正々堂々戦う…我々に出来ない事を平気でやってのける。流石は我々の長!そこに痺れるッ!憧れるッ!」
「いくで、皆の者。魔女の首を取れば、俺らの名も上がる。ほしたら、俺らが主、アンヘリエッタ様の名も上がるちゅうもんや!なーに、俺らは一騎当千のスクラマサクス、魔女の1人や2人、ちょちょいのちょいやで!」
「おー」
 騎士団は歓声を上げ、マサカズの白馬が先陣を切る。それに続き、怒涛のように、騎馬の駆け音が響き出すのであった。

つづく



  1. 2009/04/04(土) 23:51:41|
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第参話『ピチ2チャプ2ラン3』

 丸木戸は街を歩いていた。
(世界は一点に向かって落下している。その落下のエネルギーが、物質にエントロピーの増大を与え、従って物質は常に崩壊へと近付いているのだ。)
 そんな事を考えながらだ。
 彼の目は往来を行き交う人々をぼんやりと捉えていたが、ふと、“異常な存在”が紛れている事に気付いた。

 それは女性であったが、濡れていない。
 いや、それは語弊がある。

 朝から雨が降り続いている。人々は傘を差して歩いている。
 だが、“彼女”は、傘を差していない。
 だのに、彼女の髪、顔、服、全身が全く濡れていないのである。
 建物の中から出たばかり、という訳ではない。彼女は、当たり前の顔をして、往来の人混みの中を、ごく普通の歩調で歩いていた。現在の雨の勢い、彼女の歩調、5秒も経たずに全身が濡れてしまう筈だ。
 “普通”ならば。
 ―O.O.S.アウトオブスタンダード。異常者。イレギュラー。“ちから”を持った中二病患者。
 丸木戸は彼女に歩み寄って行く。
 2人の間は、距離にして10メートル。
 女性が丸木戸を見た。
 ほんの瞬き程。
 2人は絶対客観空間へとシフトした。

 女性が気怠そうに口を開く。
「…あら、O.O.S.狩りに奔走する神様が、私如きに何の御用かしら…」
 丸木戸は、彼の特徴と言える、無表情な顔を浮かべながら。
「…念の為、失礼ですが、貴女、イレギュラーですね。」
 女性はクスリと微笑み。
「…ええ。そうですが、何か?」
 丸木戸の目に、奪命に無感動な―屠殺者の―光が灯った。
「私の仕事は貴女のような存在を消し去る事です。私の力を以て、貴女が消えて頂けると嬉しい。」
「…存じ上げております。ですが…」
 …ざああああっ!
 突然、雨が酷くなった。
「…私は、こんな所で消え去るつもりはありません。」
 無風故に、地面に垂直に叩き付けられる雨が、狂ったように勢いを増す。
「私の名前は後白河律子。雨は私の力。この世の不浄を洗い流す。それが私の使命。」
 丸木戸は、ふっと短く溜め息をつくと、やれやれと云った表情を浮かべた。
「…当に中二病の思考だ。」
 ざああああ…
 地面はもう浅い川と化していた。
 女性は、足元を流れる水を見つめ。
「…使命によって、神を洗い流す事が、私に課せられた唯一絶対の…成すべき事ッ!」

You contacted IRREGULAR, Just now.

ごしらかわ りつこ
後 白 河 律 子
RITSUKO GoSHIRAKAWA
【濡レヌ女】
『Un-wet Lady』

其の闘いに於いては
【逃走】と【引き分け】は
存 在 し な い
勝利者は生き
敗北者は死ぬ
実に単純明快にして
闘いのアーキタイプ
されど勝利者は敗北者に尊厳を
死者に弔いを忘れず

言い替えれば其れは
《Funeral》
葬 儀 で あ る

FUNERAL is start.

Let's get set SURVIVE.

 丸木戸の視界が赤くなる。
 雨粒が血に変わったからだ。
「聖なる血は浄化の証。神すら浄化する神聖なる水の裁きを受けるが良いわ!」
 丸木戸の全身から力が抜けていく。
 圧倒的な脱力感。
 血の雨による影響である事は言うまでもない。
 丸木戸は立っている事が出来ない。
 ガクリと膝をつく。
「…なる…ほど…生きる力を…奪う…のか…」
「神なんて、もう特別でも何でもないのよ。貴方はここで朽ち果てる。」
 丸木戸の体からは、加速度的に活力が失われていく。
 まるで糸が切れた操り人形の如く、丸木戸はその場にうつ伏せに倒れた。
(顔が…冷たい…な。)
 雨は降り注ぐ…容赦なく。雨に容赦といった概念があるとすればだが。

 倒れた男。その背に降る雨。
 冷たく見つめる女。

「…そこから這い上がる力なんてないでしょう。あなたはそのまま、時の水流に流されてしまえば良い。そして貴方の存在は、絶対客観空間に呑まれて消えるのよ。」
 まずい。
 一枚一枚布が被せられていくように、丸木戸の思考は薄れていく。
 …何も考えられなくなる…
「………」
「さようなら。神様さようなら。」
 丸木戸は命を失った。

 …油断したのか?
 神である私が負ける筈がないと?

 ―否。
 …負け惜しみか?

 ―いいえ。
 その“否”は完全な“否”。
 1ナノメートルの隙間すらない、事実としての“否”。

 空間が変質した。
〈…ははは。全く悪い冗談だ。〉
「!?」
 神の顔には、悪魔の笑み。
〈神は何が何でも死なないのだよ。〉
 ここに来て、初めて律子の体が濡れ始めた。
「な!?…何故!?」
 逆に、丸木戸の体は乾いていた。
〈勝てると思ったか?〉
〈神が倒れると思ったか?〉
〈私/我々は断言する。如何なる事があろうとも、神たる丸木戸誠は死ぬ事が無いと〉
 それまでの状態が嘘かのように、律子の全身はもうびしょびしょに濡れていた。
「そんな……悔しい……」
〈くやしいか〉
〈かみに まけるのが くやしいのか〉
 律子は膝をつく。かつて神がそうしたように。
「……こんなのは……狡い……」
 ざああああ…

〈ほろぼすのも〉
〈みずから ほろびを えらぶのも〉
〈どちらも たのしい あそびだとしたら〉
〈ほろぼすほうを えらんだとて〉
〈どうして それが〉

 …罪悪かしら?

 ざああああっ………。

 ―雨が止んだ。
 雲が晴れ、合間から太陽の光が差し込み、雨上がりの爽やかな空気が辺りを満たし始めた。

 律子の体は冷たくなっていた。
 もう二度と、人の温もりが戻る事はない。もう二度と、人として想い、語り、振る舞う事はない。
 彼女は生きながらにして死んだ。
 丸木戸は、傘を彼女の体に掛けた。

 青空の下、傘を差して跪く女。

「よく、似合っている。」
 丸木戸は静かに、〈境界線〉を越えた。
 絶対客観空間は収束し、律子共々、人の知覚の及ばない場所へと、光の速度を保って消え去った。
 人混みの往来は変わらず在った。
 丸木戸は街路の向こうへゆっくりと歩み去った。
 その後に残された、青い傘が、道端に。

》つづく《



  1. 2009/03/22(日) 15:48:39|
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Basilard

『傭兵』―
 この世界に於いて其れは、単に、武力に依って戦いに寄与する存在では無く、所謂“破壊活動”以外の任務も請け負う。分かり易く言うなれば、“何でも屋”と呼ぶ事が出来る。
 彼/彼女達が『傭兵』と呼ばれる由縁は、一般人に比べて、“身を守る力”に優れている事。其れは直接的(武技・戦技・法術等)なものから間接的(知能・感覚・知識等)なものまで、“身を守る”事に活用可能な事柄全般を総合してそう呼ぶ。
 故に『傭兵』は単なる戦力としてだけでなく、様々な状況に投入される。

『傭兵協会』
 傭兵達の属する組織。主にクライアントとの交渉を経て獲得した任務を、傭兵達に割り振る役目を担う。
 その資金源は、クライアントとの契約金の一部であり、残りは傭兵への報酬となる。
 基本的に、傭兵は皆、この協会に所属する事になっており、逆に言えば、協会に属さない者は、傭兵ではないという事になる。
 先述の報酬支払いの面での問題(悪く言えば、協会によるピンハネ)への不満から、協会を脱し、自らコネクションを築いて任務をこなす者も存在するが、そう言った者は、性質こそ傭兵の其れであるが、『賞金稼ぎ(バウンティハンター)』と呼ばれ、傭兵とは区別される。

 傭兵協会の一室。協会の事務員と、バゼラードが、机を挟んで座っていた。
 黒いフォーマルに身を包んだ事務員は、中年の男性。実直さが周囲に雰囲気となって表れている様だ。
 バゼラードは、特徴的な銀髪のボサボサ頭を時折掻き上げつつ、面倒臭そうな表情を浮かべながら、口を開いた。
「…で、わざわざ奥まで招き入れた訳は?」
「バゼラード。実は、骨のある仕事が回って来てね。今、頼めるのは君くらいしかいない。」
 バゼラードは少し興味を惹かれた様子で体を乗り出し。
「へえ。…そんな事言われたら、黙って帰る訳には行かないな。聞かせてくれよ。」
 事務員は胸の前で手を組み合わせ、肘を机の上に置いた。
「…『スクラマサクス』という名前を聞いた事はあるかね?」
「タムラマサカズ?」
「スクラマサクスだ!」
「知ってるよ。『アンヘリエッタ』のお抱え騎士団だろう。常に白銀の甲冑に身を包み、白鳥の紋章の刻まれた剣を携える。主たる公女アンヘリエッタの為なら命も投げうつと言うオポンチ騎士団だ。」
「ふむ…流石は凄腕の傭兵だな。」
「お世辞はいいよ。で?そいつらがどうした。」
「実は、そのスクラマサクスが、とある村を襲撃しようとしているらしい。」
「公家のお抱え騎士団が?穏やかじゃないな。どうしてまた?」
「とある村…ルフェリア村というんだが、その村に『魔女』が住んでいるらしい。どうやら“魔女狩り”をするつもりのようだ。」
「魔女狩り?…おいおい、何考えてんだ?たかが50人そこらのポコチン騎士団が魔女に勝てるわけねえじゃん。魔女ってすげー魔力持ってんだぜ。今時魔女狩りなんてやる奴がいたなんてな。」
「まあ、魔女に勝てるかどうかは別にして、スクラマサクスは少なくとも村を焼き尽くすつもりらしいのだ。」
「なんでだよ!」
「おそらくは見せしめだろうが…」
「メリットが感じられねーな。そんな事した所で、魔女がブヂギレて、ケツの毛まで焼き尽くされるのがオチだと思うが。」
「詳しい事は魔女本人に聞くのが早いだろう。彼女は、騎士団が村を狙う理由を知っているそうだ。」
「…なんか出来過ぎた話だな~。絶対なんかあると思うな~。」
「だから君に頼んだんだよバゼラード。」
「……わかったよ。やるよ。どうせアレだろ、クライアントの名前とか、情報ソースとか…」
「こちらから言わない限りは秘密だ。と言うか規則だろう。知ってるだろう。」
「そうでした。…んじゃ、ルフェリア村に行けばいいんだな。」
「うむ。ツフォルン鉄道を使えばすぐだ。」
「はいはい。イテキマース」

 こうしてバゼラードはルフェリア村へ向かった。



  1. 2009/03/21(土) 23:25:24|
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